化粧品ビジネスを始めるあなたへ:許可取得に必要な要件・手続き・注意点を徹底解説

化粧品を販売したい、輸入したい。
それには「化粧品製造販売業許可」「化粧品製造業許可」が必要です。
肌や髪、口の中で使われる化粧品。怪しい業者が販売するものは使いたいくないですよね。
化粧品を無許可で輸入・販売し、逮捕された事例もあります。
消費者の安全を守ること。化粧品のビジネスで最重要事項の一つです。
お客様に安心して化粧品を使ってもらうために、適切に許可を取得しましょう。
この記事でわかること
- 許可取得の流れ
- 必要な手続き
- 許可取得後のこと
許可取得のステップ
許可の取得は下のような流れで進みます。

事前確認
- どんなものを輸入、販売、製造するのか。そもそも化粧品に該当するのか。
輸入したいものが決まっているなら、「化粧品として販売できるのか」「医薬部外品に該当しないか」の確認が必要です。

- GQPとGVP
「製造販売業許可」において絶対に外せない2つの省令
- GQP省令(Good Quality Practice):
「医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品の品質管理の基準に関する省令」- 市場への出荷に関する記録の作成
- 製造業者の管理、不良品の処理、市場からの回収方法など
- 手順書、記録の管理 など
- GVP省令(Good Vigilance Practice):
「医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する省令」- 安全に関する情報の収集、安全確保措置、製造販売後安全管理に関する記録の作成・保存 など
これらの省令に適合する体制(責任者の設置、手順書・記録様式の整備など)の構築が許可の要件です。
省令の概要を理解しておきましょう。
- 人的要件(責任者の要件など)
要件を満たす責任者を用意できるかを確認しておきましょう。
製造販売業:「総括製造販売責任者」「品質管理責任者」「安全管理責任者」の設置が必要
製造業者:「責任技術者」の設置が必要

- 物的要件(事務所、試験検査設備または外部委託先の確保)
主に「製造業者」が関連。
製造設備や試験検査機器、製造所に設けられた基準を確認しておきましょう。
- 「一般区分」の製造所の構造設備(薬局等構造設備規則第13条)
-
- 製造所の製品を製造するのに必要な設備及び器具を備えていること。
- 作業所は以下に適合すること。
- 換気が適切であり、かつ清潔であること。
- 常時居住する場所及び不潔な場所から明確に区分されていること。
- 作業を行うのに支障のない面積を有すること。
- 防じん、防虫及び防そ(鼠)のための設備または構造を有すること。
- 床は板張り、コンクリートまたはこれらに準ずるものであること。
- 排水及び廃棄物の処理に要する設備または器具を備えていること。
- 製品、原料及び資材を衛生的に、かつ、安全に貯蔵するために必要な設備を有すること。
- 製品等及び資材の試験検査に必要な設備及び器具を備えていること。ただし、当該製造業者等の他の試験検査又は他の試験検査機関を利用して自己の責任において当該試験検査を行う場合であって、支障がないと認められるときは、この限りではない。
要約すると、「外部と遮断された清潔な環境を整備してください」ということです。
製造所に容易に人が出入りできると異物混入のリスクが高まります。そういった面も考慮してください。 - 「包装・表示・保管区分」の製造所の構造設備(薬局等構造設備規則第13条の2)
-
- 製品等及び資材を衛生的に、かつ、安全に貯蔵するために必要な構造及び設備を有すること。
- 作業を適切に行うのに支障のない面積を有すること。
- 製品等及び資材の試験検査に必要な設備及び器具を備えていること。ただし、当該製造業者等の他の試験検査又は他の試験検査機関を利用して自己の責任において当該試験検査を行う場合であって、支障がないと認められるときは、この限りではない。
「清潔に作業ができる環境を整えてください」ということですね。
事前相談
役所の薬務課などに、どんなものを製造/販売したいかなどを相談します。
「総括製造販売責任者になる予定の方の学歴が妥当であるか」「製造所設備は妥当か」など。
資料や図面などを持ち込んで説明します。担当者からのコメントで足りない要件が見えてきますので、申請に向けて要件を詰めていきましょう。
事業者コード登録/手順化・文書化
- 事業者コード
申請や承認などの手続きに使われる9桁のコードを取得します。
- 業者に紐づくコード:下3桁が「000」
- 業種(製造販売業、製造業)に紐づくコード:下3桁が「001」
事業者コードの登録は原則として厚生労働省の「FD申請ソフト」を使用します。
ダウンロード
- 業務の流れの確認
前にも少し説明したように手順書や記録様式を作成します。
5W2H(誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どうやって、どのくらい)などの観点から業務を洗い出していきましょう。
- GQP、GVP手順化、文書化
上で洗い出した業務を文書化します。この作業が最重要かつ負担が大きいです。
品質管理業務の手順に関する手順書(GQP) | 安全確保業務の手順に関する手順書(GVP) |
---|---|
市場への出荷に係る記録の作成 | 安全管理情報の収集 |
適正な製造管理及び品質管理の確保 | 安全管理情報の検討及びその結果に基づく安全確保措置の立案 |
品質等に関する情報及び品質不良等の処理 | 安全確保措置の実施 |
回収処理 | 製造販売後安全管理に関する業務に係る記録の作成 |
文書及び記録の管理 | その他、製造販売後安全管理に関する業務を適正かつ円滑にするために必要な業務 |
その他、品質管理業務 | ※GVP手順書の作成は必須ではない。業務を適切に実施するには手順書は用意すべき。 |
手順書や記録様式には行政が作成している雛形があります。参考にできますが、あくまでも雛形です。
業務で実際に使える。活きた内容に仕上げることが重要です。
書類作成の専門家である行政書士は文書化をサポートできます。
外注で準備にかかる負担を減らし、マーケティングなどの重要業務に専念できるでしょう。
是非ご一考ください。
申請書類の作成
- 提出書類一覧
製造販売業許可の申請書類 | 備考 |
---|---|
製造販売業許可申請書 | |
経過表 | |
提出用申請データ出力書面 | |
履歴事項全部証明書※1 | 法人のみ |
総括製造販売責任者の雇用契約書の写し又は使用関係を証する書類※1 | |
総括製造販売責任者の資格を証する書類※1 | |
組織図並びに品質管理及び製造販売後安全管理にかかる体制に関する書類 | |
申請者に係る医師の診断書※2 | |
製造販売後の許可証の写し※3 | |
業者コード登録票 | |
付近の見取り図、平面図、配置図 | |
保管設備に関する図面 | 市場出荷判定を自社で行い、製品を事務所で保管する場合 |
電子申請(FD申請)ソフトによって提出用出力したFD又はCDーR/RW |
※1 申請者が既に同一の書類を提出している場合は省略できる
※2 責任役員が精神の障害により業務を適正に行うための認知、判断、意思疎通ができない恐れがある場合にのみ提出
※3 既に他の業態の製造販売業許可を取得している場合にのみ提出
製造業許可の申請書類 | 備考 |
---|---|
製造業許可申請書 | |
経過表 | |
提出用申請データ出力書面 | |
履歴事項全部証明書※1 | 法人のみ |
責任技術者の雇用契約書の写し又は使用関係を証する書類※1 | |
責任技術者の資格を証する書類※1 | |
構造設備の概要一覧 製造設備器具一覧 試験検査設備器具一覧 | |
他の試験検査機関等の利用概要 試験検査設備器具の一覧 契約書の写し又は利用証明書 | 他の試験検査機関を利用する場合 |
無菌製剤作業所の構造設備の概要 | 無菌区分を申請する場合 |
品目の一覧表及び製造工程に関する書類 | |
業者コード登録票 | |
付近の見取り図、平面図、配置図 | |
電子申請(FD申請)ソフトによって提出用出力したFD又はCDーR/RW |
※1 申請者が既に同一の書類を提出している場合は省略できる
FD申請ソフトで申請書(鑑)や提出用申請データ出力書面を作成し、それ以外はWord等で作成します。
申請
- 申請方法
1部を提出します。
控えを保管する必要があるため、書類は2部用意してください。
- 手数料について
- 標準処理期間
申請する都道府県により異なります。申請先にて確認してください。
参考として、兵庫と大阪の手数料を記載します。
製造販売業許可 | 製造業許可 | |
---|---|---|
兵庫 | ¥59,000 | ¥40,000(一般) ¥33,000(包装等) |
大阪 | ¥58,800 | ¥39,900(一般) ¥33,600(包装等) |
実地調査
実地調査は申請の約2週間後に実施されます。
- 調査で確認されるポイント(書類との整合性、設備の状況など)
調査対象 | ポイント | |
---|---|---|
製造販売業 | 責任者の確認 手順書、記録様式の確認 | 総括製造販売責任者は要件を満たす者が配置されているか 必要な手順書、記録様式が揃っているか 手順書、記録様式がGQP省令の規制を満たしているか 手順に無理がないか 総括製造販売責任者の手順書の理解度の確認 など |
製造業 | 責任者の確認 構造設備の確認 | 責任技術者は要件を満たす者が配置されているか 製造設備や試験検査機器は規制を満たしているか |
製造業は「設備や作業場所が規制を満たすか」「設備一覧と実際の設備に差異はないか」など、構造設備のチェックがメインです。
一方で製造販売業では、省令や手順書の理解度チェックが主となります。
総括製造販売責任者が役所の担当者と対面形式で質疑応答を受けます。
「市場出荷の手順を教えてください。それはどこに規定されていますか?」
「◯◯の記録はどういう流れで回されますか?その記録はどのような方法でどのくらいの期間保管されますか?」
「回収が起きた時の一連の手順を教えてください」など
私も前職では何度も経験しました。とにかく緊張します。緊張して頭が回らなくなります。
対策としては、事前に法令や手順書などの読み合わせなどの勉強会をするのが良いでしょう。実作業に即した手順書を作成するというのも大事なポイントです。
実地調査が済むと改善指示などが言い渡されます。
対応し認められれば、いよいよ許可証の交付です。
許可証の交付
交付された許可証は事務所の見えやすい位置に掲示します。
原本は無くさないように厳重に保管し、コピーを額縁に入れるなどして掲示すると良いでしょう。
許可取得後の手続き
変更届
変更事項と必要な書類を示します。
必要書類は都道府県によって異なる場合がありますので代表的な書類を記載します。
詳細は申請の窓口にご確認ください。
変更事項 | 必要書類 |
---|---|
責任役員 | 履歴事項全部証明書、医師の診断書 |
総括製造販売責任者または責任技術者 | 総括製造販売責任者または責任技術者の使用関係を証明する書類 資格を証明する書類 |
総括製造販売責任者または責任技術者の氏名、住所 | 戸籍謄本等を提示 |
構造設備 | 構造設備の概要一覧平面図、建物の配置図他の試験検査機関等の利用概要 |
申請者の氏名・住所 | 履歴事項全部証明書(法人) 戸籍謄本等(個人) |
事務所・製造所の名称 | – |
製造販売業の主たる機能を有する事務所の所在地 | – |
提出期限:変更後 30日以内
更新申請
許可の期限は5年です。5年ごとに更新申請が必要です。
許可期限の60日前を目処に更新申請を要求する先が多いです。
- 更新手続きの流れと必要書類
製造販売業許可 | 製造業許可 |
---|---|
許可更新申請書(鑑) | 許可更新申請書(鑑) |
経過表 | 経過表 |
提出用申請データ出力書面 | 提出用申請データ出力書面 |
業許可証の原本 | 業許可証の原本 |
電子申請(FD申請)ソフトによって提出用出力したFD又はCDーR/RW | 電子申請(FD申請)ソフトによって提出用出力したFD又はCDーR/RW |
構造設備の概要一覧 | |
平面図及び建物の配置図 | |
他の試験検査機関等の利用概要 試験検査設備器具の一覧 契約書の写し又は利用証明書 | |
無菌製剤作業所の構造設備の概要 |
手続きの流れは新規申請時と同様です。
FD申請ソフトで申請書(鑑)や提出用申請データ出力書面を作成し、それ以外はWord等で作成します。1部を提出し、控え用にもう1部持参します。
- 手数料
都道府県によって手数料が異なります。
参考として兵庫と大阪の手数料を記載。
製造販売業許可 | 製造業許可 | |
---|---|---|
兵庫 | ¥46,000 | ¥25,000(一般) ¥24,000(包装等) |
大阪 | ¥47,200 | ¥25,200(一般) ¥24,100(包装等) |
化粧品製造販売届
化粧品を販売するには品目ごとの届出が必要。「化粧品製造販売届書」を都道府県知事に届け出ます。
審査は要さず、届け出たその日から販売が可能です。一見簡単に見えますが、製造販売業者は製品の安全性などの全責任を負います。審査がない分、より慎重な対応が必要と言えるでしょう。
GQP /GVPに即した品質管理・安全管理体制の構築が重要です。
行政書士が支援できること
- 制度の理解
化粧品を規制する医薬品医療機器等法、GQP省令、GVP省令は複雑で難解です。
掴みどころが難しいため、計画的な教育訓練が重要です。
継続的な教育訓練のサポートを提供致します。
- 申請書類、手順書/記録様式の作成支援
書類作成の専門家である行政書士は、申請書、手順書などの文書類の作成を支援できます。
事業者の皆様は新たな商材の発掘やマーケティングなどに集中してください。
- 「運営開始後」の変更手続き、更新申請も含めた継続支援
事業を展開していると、市場の変化や法改正に伴って新たな書類や手順書が必要になります。
行政書士は行政への申請代行とともに、運営で必要な多くの手続きを一貫してサポートできます。
おわりに:事業者の皆様へ
美容業界に関わる皆様の「キレイを通して幸せになってほしい」という素晴らしい思いをお手伝いさせてください。
総括製造販売責任者としての経験を皆様に還元させていただければ幸いに思います。
初めての化粧品ビジネスを、許可取得から運営までフルサポートします。
まずは無料相談へ。